2025年、世界中のピアノファンが注目したエリザベート王妃国際音楽コンクール。
その舞台で、若きピアニスト亀井聖矢さんが見事第5位に入賞し、同時に「国際コンクールへの挑戦はこれが最後」という衝撃の宣言をされました。



この記事では、2025年のエリザベート王妃国際音楽コンクールを振り返りながら、亀井聖矢さんの快挙、そして亀井さんの音楽家としての新たな旅立ちの物語を、コンクールの結果や彼への評価を交えて詳しく解説していきます。
こんな方におすすめ
- 亀井聖矢さんのファンの方
- エリザベートコンクールの結果が知りたい
- 若きピアニストの挑戦と葛藤の物語に興味がある
- クラシック音楽やピアノコンクールが好きな方
亀井聖矢さんが出場したエリザベートコンクール2025とは?
- 世界三大コンクールの一つと称される権威と歴史
- 課題曲と自由曲?コンクールのステップ
- ファイナリストを追い込む過酷な現代曲の課題
世界三大コンクールの一つと称される権威と歴史
そもそもエリザベート王妃国際音楽コンクールとは、どのようなコンクールなのでしょうか?
このコンクールは、ショパン国際ピアノコンクール、チャイコフスキー国際コンクールと並び、世界三大コンクールの一つに数えられる、非常に権威のある大会です。
開催地はベルギーのブリュッセル。ピアノ、ヴァイオリン、声楽、チェロの4つの部門が、それぞれ4年周期で開催されています。
コンクールはまずビデオ予備審査から始まり、それを通過した世界中の若き才能がブリュッセルに集います。第1次予選、準決勝(セミファイナル)は「ブリュッセル・フラジェ」で、そしてファイナリストだけが進める決勝(ファイナル)は、より大きな舞台である「ブリュッセル芸術センター」で開催されるというステップを踏みます。
その歴史は古く、1937年にベルギーの偉大なヴァイオリニスト、ウジェーヌ・イザイを讃えて始まった「イザイ国際コンクール」が前身となっています。その後、音楽への深い理解があったベルギーのエリザベート王妃の名を冠し、1951年から現在の名称になりました。
年齢制限は18歳以上31歳未満と定められており、世界中から選び抜かれた若き才能だけがこの舞台に立つことを許されます。
公平な審査にも定評があるこの最高の登竜門では、近年、日本人ピアニストの活躍が目覚ましく、世界の注目を集めています。
特に亀井聖矢さんが出場した2025年大会では、出場した6名全員がセミファイナルへ進み、史上初めて4名がファイナリストに選出されるという歴史的快挙を成し遂げました。
2021年大会での複数入賞に続く快挙であり、日本のピアノ界の実力を強く印象付けたのです。
課題曲と自由曲?コンクールのステップ
エリザベートコンクールは、ピアニストがただ好きな曲を弾くのではなく、各段階で厳しい課題が与えられます。基本的には、全員が弾く課題曲と、ピアニストが自分の個性を示すために選ぶ自由曲が組み合わされています。
予選から決勝までの大まかなステップは以下の通りです。
- 予選(ビデオ審査〜第1次予選) 予選の段階では、バッハ、ベートーヴェン、ショパンといった「この作曲家の作品を弾いてください」という形式の課題と、「あなたの得意な曲を聴かせてください」という自由曲がバランス良く求められます。基礎的な技術と音楽性の両方が試されるステージです。
- 準決勝(セミファイナル) 準決勝に進むと、課題はさらに具体的になります。出場者は、オーケストラと共演する**モーツァルトの協奏曲(指定された数曲から1曲選択)**と、リサイタルの両方を演奏しなければなりません。リサイタルには、このコンクールのために作られた現代曲を必ず含める必要があり、約30〜35分という時間制限の中で、自身の音楽の世界を表現します。
ファイナリストを追い込む過酷な現代曲の課題
数々のステップを乗り越えた者だけがたどり着ける決勝(ファイナル)。 ここでの課題こそが、エリザベートコンクールを「世界で最も過酷」と言わしめる所以です。
決勝では、2種類の協奏曲をオーケストラと共演します。
- 課題曲(現代曲) 最大の特徴が、このコンクールのためだけに作られた、誰も聴いたことのない新曲です。ファイナリストは、約1週間の隔離生活の中でこの楽譜を初めて渡され、たった1週間という短期間で曲を深く解釈し、完璧に仕上げなければなりません。精神力、技術、知性の全てが試されるのです。
- 自由曲(協奏曲) それに加えて、各自が最も得意とするピアノ協奏曲を1曲披露します。ここでピアニストは自身の芸術性の高さを存分にアピールします。亀井聖矢さんがサン=サーンスの《エジプト風》を選んだのは、この自由曲の枠でした。
2025年エリザベートコンクールのファイナル結果
- 優勝はオランダのニコラ・メーウセンが一位に
- 亀井聖矢さんは第5位!日本人4名がファイナル進出の快挙
- 亀井聖矢さんがファイナルで披露した演奏プログラム
優勝はオランダのニコラ・メーウセンが一位に
激戦の頂点に立ったのは、オランダの新星ニコラ・メーウセンさんです。
二コラさんはイモラ国際ピアノアカデミーやエリザベート王妃音楽礼拝堂で研鑽を積み、すでにジャニーヌ・ヤンセンさんといった著名な音楽家とも共演を重ねる実力派として知られていました。
ファイナルではプロコフィエフの協奏曲第2番を選択し、その鮮やかなタッチと抜群のリズム感で聴衆を圧倒。 彼の持つポテンシャルの高さが審査員から高く評価され、見事一位の栄冠に輝いたのです。
亀井聖矢さんは第5位!日本人4名がファイナル進出の快挙
そして、私たちの亀井聖矢さんは、見事第5位に入賞されました! 世界最高峰の舞台での入賞は、本当に素晴らしいことですよね。
さらに、今回のコンクールは日本のクラシック界にとって忘れられない歴史的な瞬間となりました。 12名のファイナリストの中に、なんと4名もの日本人ピアニストが名を連ねたのです。 これはコンクール創設以来、極めて異例の快挙なのです。
亀井聖矢さんと共にファイナルを戦ったのは、重厚なブラームスの協奏曲第2番で見事第2位に輝いた久末航さん、同じくブラームスで聴衆を魅了した桑原志織さん、そしてダイナミックなプロコフィエフを演奏した吉見友貴さんです。
彼ら日本人コンテスタントにとって、指揮者として共演した大野和士さんの存在も、きっと心強い支えになったことでしょう。 この結果は、日本のピアノ界全体のレベルの高さを世界に示すものとなりました。
亀井聖矢がファイナルで披露した演奏プログラム
注目のファイナルで、亀井聖矢さんがその音楽性を存分に発揮した演奏プログラム。 それは、以下の2曲でした。
課題曲:クリス・デフォールト作曲《Music for the Heart》
このコンクールのために書き下ろされた新曲です。なんとわずか1週間という準備期間で、各ピアニストがそれぞれの解釈で演奏を披露しました。亀井さんは、このエキゾチックな趣のある楽曲を、持ち前のキレのあるタッチで魅力的に演奏し、聴衆の心を掴みました。
選択協奏曲:サン=サーンス作曲 ピアノ協奏曲第5番 ヘ長調 作品103《エジプト風》
亀井さんが得意とするレパートリーの一つです。重厚な作品を選ぶ出場者が多い中、この色彩豊かでエキゾチックな雰囲気を持つ協奏曲は、ひときわ異彩を放っていました。特に超絶技巧が満載の終楽章では、すさまじい勢いで弾ききり、その爽快な演奏は「一服の清涼剤」のようだと高く評価され、会場を熱狂の渦に巻き込んだのです。
なぜ人々は亀井聖矢の演奏に惹きつけられるのか?その魅力と評価
ショパンコンクールの挫折を乗り越えた精神力と高い評価
コンクール引退宣言に込めた作曲への新たな夢
まとめ:コンクールの先へ!亀井聖矢が切り拓く新たな音楽の道
ショパンコンクールの挫折を乗り越えた精神力と高い評価
亀井聖矢さんの魅力は、その卓越した演奏技術だけではありません。 今回のエリザベートコンクールには、彼の強い精神力を示すドラマがありました。
実は彼、エリザベートの直前に、もう一つの目標であったショパン国際ピアノコンクールの予備予選に挑戦していました。 しかし、結果は望むものではなく、本選進出は叶わなかったのです。
「すべてが覆ってしまったような気持ちになった」「報われない努力だったと感じてしまった」 そう語るほど、亀井さんは深く落ち込みました。
しかし、彼は数日で気持ちを立て直します。 そして、この挫折が、皮肉にも彼をプレッシャーから解放しました。 「おかげでエリザベートでは、今演奏している音楽だけに集中できるモードになれた」と語る亀井さんの表情は、どこか晴れやかでした。
この逆境を乗り越え、自分自身の音楽を存分に表現した彼の姿に、多くの人が心を打たれ、その精神力は高く評価されたのです。
コンクール引退宣言に込めた作曲への新たな夢
そして、コンクール後に亀井さんが語った言葉は、多くのファンを驚かせました。 ご自身のX(旧Twitter)で、このように投稿されたのです。
エリザベート、第5位を受賞しました。
ファイナル本当に幸せでした。
応援ありがとうございました。今年でコンクールは卒業します。
これからは新しい曲もたくさん開拓したいし、作曲も真剣に深めたいし、海外の活動も力を入れていきたい。
新しい旅路も温かく見守ってもらえたら嬉しいです。 pic.twitter.com/NbDwNa7lf1— 亀井聖矢 Masaya Kamei (@masayakamei_pf) June 1, 2025
この投稿にある通り、亀井さんは今回のエリザベートを最後に、国際コンクールへの挑戦を終えることを宣言しました。
すでに人気ピアニストとして活躍する亀井さんにとって、コンクールはあくまで自分の音楽を試す挑戦の場でした。 これからはコンクールに縛られず、自分が本当にやりたい音楽を自由に模索していきたい、と亀井さんは言います。
その一つが、作曲への挑戦です。 彼は昔から何かを創作することが大好きで、これからは自分の作品を届けていくことにも力を入れていきたいと目を輝かせます。
クラシックの歴史や文化を前提とした楽しみ方だけでなく、謎解きやストーリーと組み合わせるなど、今の時代の人たちにもっと伝わる新しい音楽の見せ方を模索したい。
亀井さんの魅力は、ピアニストという枠に収まらない、無限の創造性にあるのかもしれません。
まとめ:コンクールの先へ!亀井聖矢が切り拓く新たな音楽の道
今回のエリザベート王妃国際音楽コンクールは、亀井聖矢さんにとって、まさにキャリアの大きな区切りとなりました。
ショパンコンクールでの挫折という大きな壁を乗り越え、エリザベートで見事5位入賞。 そして、コンクールからの卒業と、作曲という新たな夢への挑戦宣言。
亀井さんの物語は、コンクールが音楽家のゴールの全てではないことを教えてくれます。 それは、自分自身の音楽と向き合い、次のステージへ進むための、一つの通過点に過ぎないのかもしれません。
競争の場から解き放たれ、アーティストとして新たな一歩を踏み出した亀井聖矢さん。 亀井さんがこれからどんな音楽を、もしかしたら音楽にとどまらない何かを私たちに届けてくれるのか、その無限の可能性に期待せずにはいられませんね。
ポイント
- 亀井聖矢さんは2025年エリザベートコンクールで第5位に入賞
- このコンクールを最後に国際コンクールからの引退を宣言
- 優勝者はオランダのニコラ・メーウセン
- ファイナルには日本人ピアニストが4名進出する快挙となった
- エリザベートコンクールは世界三大コンクールの一つに数えられる
- ファイナルでは1週間で新曲を仕上げる過酷な課題がある
- 亀井さんはショパンコンクール予選敗退の挫折を乗り越えて臨んだ
- ファイナルではサン=サーンスの協奏曲第5番エジプト風を演奏
- 今後は演奏活動に加えて作曲にも力を入れていきたいと語った
- クラシックの新しい見せ方を模索するアーティストとして期待される