幻想即興曲の難易度が気になる方へ。この記事では、「幻想即興曲」を弾くために必要な技術やコツを詳しく解説しています。難易度の基準や「幻想即興曲」と同じくらいのレベルの曲、さらに中学生で弾ける人の割合についても触れていますので、興味のある方はぜひ参考にしてください。
練習期間がどれくらいかかるのか、具体的な弾き方のコツ、そして「子犬のワルツ」との難易度比較など、初心者から上級者まで役立つ情報を幅広くご紹介しています。
また、辻井伸行さんやフジコ・ヘミングさんの演奏動画も紹介しています。無料楽譜の入手方法もありますので、実際に挑戦する際の参考にしてくださいね。
幻想即興曲の難易度と基本情報を解説!
この項の概要
- 幻想即興曲の読み方と基本情報
- なぜ人気なのか
- 難易度はどれくらい?客観的な指標は?
- 難しいポイントは?
- 弾くのに何年かかる?
- 中学生が弾ける割合とは?
- 子犬のワルツとの難易度比較
- 難易度が同じくらいの曲:全音ピースから紹介
「幻想即興曲」の読み方と基本情報
幻想即興曲の読み方は「げんそうそっきょうきょく」です。この曲は、ポーランドの作曲家ショパンによって1834年に作られました。ただし、ショパン自身はこの曲を発表するつもりはなかったようで、遺作として後に出版されています。
曲の特徴
- 形式:「三部形式」になっており、速い主題のAパート、穏やかなBパート、そして再びAパートが戻ってくる構造
- 調性:嬰ハ短調(F# minor)
- リズム:右手と左手が異なるリズムを刻む「4対3」の複雑なリズムが使われており、これが練習の難所のひとつ
なぜ人気なのか
幻想即興曲は音楽に詳しくない方でも、一度は耳にしたことがある曲ではないでしょうか。CMや映画のBGMでもよく使用されている気がします。
冒頭の情熱的でありながら力強く流れる美しいメロディーは、多くの人を惹きつけます。その印象的なメロディーラインが繰り返される構成も相まって、記憶に残りやすいのが特徴です。
この魅力がショパンの代表的な人気曲の一つとして、多くの人々に愛されている理由といえるではないでしょうか。
難易度はどれくらい?客観的な指標は?
幻想即興曲の難易度は、中級上から上級程度と考えられます。客観的な基準としては、ピティナ・ピアノステップや全音ピアノピースの分類が参考になります。それぞれの分類を詳しく見てみましょう。
ピティナ・ピアノステップでの分類
ピティナ・ピアノステップでは、全23段階中「発展5」に分類されています。このレベルは難易度が高い方から4番目であり、中級上から上級の間といえるでしょう。
同じ「発展5」に分類されているショパンの作品には、以下の曲があります:
ちなみに私は、中学3年の頃、コンクールで「タランテラ」を演奏し、発表会では「幻想即興曲」を弾きました。求められるテクニックはそれぞれ異なりますが、個人的には「タランテラ」の方が技術的な難易度が高く、弾きづらさを感じました。
全音ピアノピースでの分類
全音ピアノピースでは、難易度を初級から上級上までの5段階(A~F)で分類しています。この中で、幻想即興曲は「E」にあたる上級とされています。
以下は全音ピアノピースの分類基準です:
- A:初級
- B:初級上
- C:中級
- D:中級上
- E:上級
- F:上級上
これらの分類からもわかるように、幻想即興曲は他の曲と比較しても難易度が高く、技術的な面でも挑戦しがいのある作品といえます。
難しいポイントは?
以上のように、幻想即興曲は一般的には上級レベルですが、具体的に難しいポイントはどの辺りでしょうか。
難易度を決めるポイント
- リズムの複雑さ:右手が16分音符、左手が3連符という非対称なリズムが特徴
- 速さと正確さ: 曲のテンポが速いため、正確なタッチが必要
- 表現力: 同じ形のメロディーが繰り返される分、音楽的な表現力が求められる
ただ速く弾ければよいというわけではなく、各フレーズをどのように「うたい」、全体として説得力のある演奏にするかが大切です。
弾くのに何年かかる?
幻想即興曲を弾けるようになるまでの期間は、ピアノ経験や練習の頻度によって異なります。以下は目安として参考にしてください。
初心者の場合
ピアノを始めたばかりの方が幻想即興曲に挑戦するには、基礎から練習を積む必要があります。そのため、約5年ほどはかかるかもしれません。
- リズムや速いフレーズの克服がカギ
ショパン特有のリズムや速いフレーズが難しいため、まずは基礎練習(例:ツェルニー30番や40番)をクリアしてから取り組むのがおすすめです。 - レッスンを活用しよう
独学よりも、先生と一緒に練習を進めると効率的です。正しい方向性で努力を積み重ねることが一番の近道だからです。いつまでに幻想即興曲を弾けるようになりたい!と目標を伝えることで、具体的なアドバイスがもらえるでしょう。
中級者の場合
中級レベルの方なら、比較的チャレンジしやすいです。ただし、技術的に難しく感じるところが多ければ、半年~1年以上かかることもあるでしょう。
普段の練習曲集で、指を鍛えたり、表現力を高めておくことが大切です。リズム練習や譜読みを丁寧に行えば、取り組みやすくなります。
上級者の場合
ピアノ上級者であれば、数カ月から半年程度で弾けるようになるかと思います。他のショパンの難曲(エチュードなど)を経験していれば、比較的スムーズに進むでしょう。
ちなみに私は中学3年生の発表会で幻想即興曲を演奏しました。練習期間は約3カ月。高校受験の合間で、1日の練習時間は30分~1時間程度でしたが、無事本番までに暗譜で弾けるようになりました。
ただ、言うまでもなく技術力・表現力や芸術性を高めていくことには終わりがありません。当時の私の演奏は、技術的にも音楽的にもまだまだ未熟だったと思いますが、「ひと通り弾ける」という意味では形にはなったと思います。
幻想即興曲を弾くまでに、次のような曲を経験していました:
作曲家・曲名 | 弾いた時期 |
---|---|
ショパン :ワルツ第5番 変イ長調 Op.42 | 中学2年のコンクール |
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ「月光」第3楽章 Op.27-2 | 中学2年の発表会 |
ショパン :タランテラ 変イ長調 Op.43 | 中学3年のコンクール |
これらの曲を経験していた身からすると、幻想即興曲は技術的には比較的容易だと感じました。同じような形のパッセージが多いので、譜読みもそれほど苦ではなく、練習もしやすかったように思います。
余談:ショパンの「タランテラ」
最後に挙げた「タランテラ」は、ショパンの中でもあまり知られていないかもしれません。この曲はテンポが速く、独特の弾きづらさがありますが、推進力がある明るい舞曲で、個人的にお気に入りの一曲です(悲しいことに今はもう弾けませんが…)。
↑こちらは、ダニール・トリフォノフ(Daniil Trifonov)というピアニストの演奏動画です。初めて聴いたとき、「同じ曲とは思えない!」と思ったほど衝撃を受けました。彼の演奏では、タランテラの魅力が存分に表現されています。ご興味があればぜひ聴いてみてくださいね。
中学生が弾ける割合とは?
中学生で幻想即興曲を弾けるレベルの人は、どれくらいいるのでしょうか。前提として、必要になる技術レベルからみていきましょう。
求められる技術的レベル
幻想即興曲は決して簡単な曲ではありませんが、長期間コツコツと練習を積み上げてきた人であれば、十分にチャレンジできる曲です。
幻想即興曲に挑戦するためには、以下のような技術が求められます:
- ツェルニー30番や40番、またはそれに匹敵する難易度の曲を弾けること
- それぞれの指が独立しており、速いテンポに対応できること
右手も左手も、それぞれの指が独立してある程度速く動かせる基礎力がなければ、転んだようなガタついた演奏になり、幻想即興曲の流れるような美しさを表現するのが難しいと思います。
逆を言えば、それさえクリアしてしまえば、比較的スムーズに弾ける曲でもあるということです。
そもそもピアノを続ける中学生は少数派
中学生になってもピアノを続けている人自体が少ないように思います。実際、私が通っていたピアノ教室でも、中学生に上がるタイミングで辞めてしまう子が多かったことを覚えています。
私の地元のピアノ教室では、10人ほどの同級生がピアノを習っていましたが、中学生になっても続けていたのは4人。そのうち、幻想即興曲レベルの曲を弾ける子は2人でした。
この経験をもとにすると、「中学生までにピアノを習ったことのある中学生(小学生で辞めた人も含む)」を母数とすると、幻想即興曲を弾ける中学生は約5人に1人くらいではないかと感じます。
環境ごとに割合は異なる
私が通っていた教室は、音大を目指すような専門的な場所ではなく、コンクールを目指している子もいれば、趣味でJ-POPを弾いている子もいるといった、多様な背景のある環境でした。そのため、この教室での割合は、幻想即興曲を弾ける人の一般的なイメージに近いのではないかと考えます。
一方で、音大を目指す子どもたちが集まるような教室では、もっと多くの中学生がこの曲を弾けるでしょうし、小学生で弾きこなす子も少なくないでしょう。
幻想即興曲を弾ける「すごさ」
環境や目的の違いを踏まえると、幻想即興曲を弾けることの「すごさ」やその割合は変わります。ただ、一般的なピアノ教室や、中学生でピアノを続けている子全体を基準にすれば、幻想即興曲を弾ける人は少数派と言えます。
そして、幻想即興曲を弾けるということは、単に技術的な習熟度を示すだけでなく、その背景にある練習の積み重ねや音楽への情熱を物語るものでもあります。
中学生でこの曲を弾けるのは、技術的にも音楽的にも間違いなく高いレベルに達していると言えるでしょう。
子犬のワルツとの難易度比較
ショパンの「子犬のワルツ」と「幻想即興曲」はどちらも人気のある曲ですが、難易度にはどのような違いがあり、挑戦しやすいのはどちらでしょうか。
子犬のワルツの難易度
ワルツ第6番「子犬のワルツ」変ニ長調 Op.64-1は、全音ピアノピースでC(中級)に分類されています。一方、幻想即興曲はE(上級)に分類されているため、この基準では2段階の難易度差があることがわかります。
子犬のワルツでは速いテンポと滑らかな指使いが求められますが、幻想即興曲と比べると繰り返しが多く、技術的な負担はやや少なめです。
特徴の比較
項目 | 子犬のワルツ | 幻想即興曲 |
---|---|---|
全音ピアノピースの難易度 | C(中級) | E(上級) |
調性 | 変ニ長調 | 嬰ハ短調(中間部は変ニ長調) |
リズム | シンプル | 右手と左手で異なる複雑なリズム |
音域 | 手が小さくても挑戦しやすい | 手の広がりが求められる |
表現力 | 明るく軽快な表現 | より幅広く豊かな表現が必要 |
このように、幻想即興曲は子犬のワルツと比べて技術的な難しさが多く、さらに豊かな音楽的表現力が求められる曲です。
どちらも魅力的な作品ですが、挑戦する際は自分の現在のレベルに合った曲を選ぶことが大切です。子犬のワルツは初めてショパン作品に挑戦する方にもおすすめできる曲ですし、幻想即興曲はさらなる技術と表現力のステップアップに最適です。
難易度が同じくらいの曲:全音ピースから紹介
幻想即興曲と同じく、全音ピアノピースで「難易度E」に分類されている作品をまとめました。以下の一覧では、ショパンを含む9人の主要作曲家の名曲をピックアップしています。
今後挑戦する曲選びの参考として、ぜひチェックしてみてください!
作曲家 | 曲名 |
---|---|
ベートーヴェン | 月光の曲 |
6つの変奏曲 | |
ソナタ 葬送行進曲付 | |
ソナタ テンペスト | |
シューマン | 夢のもつれ |
3つの幻想小曲集 | |
予言の鳥 | |
ショパン | 幻想即興曲 |
ワルツ(遺作) | |
夜想曲(Op.9‐2) | |
シューベルト | アンプロンプチュ D946-1 |
アンプロンプチュ D946-3 | |
ラヴェル | 古風なるメヌエット |
ラフマニノフ | ヴォカリーズ |
アンダンテ・カンタービレ | |
リスト | 愛の夢 第3番 |
ラ・カンパネラ | |
ため息 | |
ドビュッシー | 人形へのセレナード |
沈める寺 | |
メンデルスゾーン | ロンド・カプリチオーソ |
幻想即興曲の難易度は中級~上級!弾き方のコツや無料楽譜は?
- 弾き方・練習のコツは?
- 無料楽譜はある?
- 参考動画:辻井伸行やフジコヘミングの演奏
弾き方・練習のコツは?
幻想即興曲を弾けるようになるための練習のコツを紹介します。
1. 片手練習を徹底する
まずは右手と左手を別々に練習しましょう。特に右手は速い16分音符の動きが続くため、指の独立性を高めることが重要です。左手は3連符のリズムを安定させる練習を繰り返します。
リズム変奏の具体的なメリットや方法については、以下の記事も参考にしてみてください。
2. 両手練習は「縦」が揃う音を意識する
右手と左手のリズムが異なるため、最初はタイミングを合わせるのが難しいかもしれません。その場合は、右手4拍と左手3拍が重なる「縦」の音を意識してゆっくり練習することが大切です。
このリズム感を体に馴染ませておくと、速いテンポでも自然に両手が合うようになります。
3. ペダルで濁らないようにする
幻想即興曲では、全体を通してペダルを使用しますが、音が濁らないよう注意しましょう。
ペダルの役割を意識する
ペダルは、物理的に指で音を繋げられない部分を補い、響きを持続させるために使われます。
ただし、人によって手の大きさや弾きやすい運指が異なるため、譜面通りのタイミングが必ずしも正解とは限りません。
自分の演奏スタイルに合ったペダルの踏み方を探し、調整していきましょう。
ペダルの乱用を避ける
ペダルを使用すると音が響いて「上手く弾けているように」聴こえがちですが、弾けない部分をペダルでごまかすのは避けましょう。聴き手にはその違いが伝わってしまいます。
ペダルを使う前に、前述した 片手練習 や 両手でのリズム合わせ を「ペダルなし」で十分に練習し、確実に弾けるようになってからペダルを取り入れることをおすすめします。
そうすることで、粒の揃った美しい響きを表現することができます。
無料楽譜はある?
無料で手に入る楽譜があるかどうかは、多くの方が気になるポイントではないでしょうか。実際、インターネット上には無料で公開されている楽譜があります。
IMSLP(International Music Score Library Project)
IMSLPは、世界中のパブリックドメイン(著作権が切れた作品)の楽譜を収集しているサイトです。ショパンの作品も多く収録されており、幻想即興曲の楽譜も無料でダウンロードすることができます。
無料楽譜の注意点
ただし、無料で手に入る楽譜は、公式に出版されている楽譜本やピースと比べて見づらい場合があります。また、指使いや表現記号が省略されていることも多いため、初心者の方には使いづらいこともあるかもしれません。
公式楽譜を選ぶメリット
発表会やコンクールで演奏する予定がある場合は、信頼性の高い公式出版社の楽譜を購入することをおすすめします。公式楽譜は見やすさや解釈の正確さに優れており、演奏の質を高めるサポートとなります。
ポイント
楽譜はただの練習道具ではなく、毎日向き合い、時に自分のレパートリーとして愛着の湧くパートナーのような存在だと思います。時間を共にする大切なアイテムとして、見た目や使いやすさ、記譜の詳細さなど、自分にぴったりの楽譜を選んでみてください。
参考動画:辻井伸行やフジコヘミングの演奏
同じ曲でも、演奏者によって表情や雰囲気が変わりますよね。ここでは、現代を代表する2人のピアニスト、辻井伸行さんとフジコ・ヘミングさんによる演奏をご紹介します。それぞれの演奏から、この曲の多彩な魅力を感じてみてください。
辻井伸行さんの演奏動画
辻井伸行さんの演奏は、技術的な完成度の高さに加え、繊細さと劇的な表現の幅が見事です。リズムの複雑さを感じさせないスムーズな演奏は、音の一つ一つがクリアで、美しく響き渡ります。幻想即興曲の魅力を余すところなく引き出しており、聴く人の心を深く動かします。
フジコ・ヘミングさんの演奏動画
フジコ・ヘミングさんの演奏は、感情のこもった独特なタッチが印象的です。辻井伸行さんの演奏とはまた異なる温かみがあり、どちらもそれぞれの魅力に溢れています。
同じ曲でも、演奏する人によってこんなにも違った表現になるのが音楽の面白さです。皆さんも、自分が幻想即興曲をどのように弾きたいか、ぜひイメージを膨らませてみてくださいね…♪
まとめ:幻想即興曲
いかがでしたか?幻想即興曲の難易度や魅力、練習のコツについて少しでも理解が深まったでしょうか。技術的には挑戦しがいのある曲ですが、その分、弾けるようになったときの達成感は格別です。
ぜひ、今回の情報を参考にしながら、自分なりのペースで挑戦してみてくださいね。幻想即興曲があなたのピアノライフをより豊かに彩る一曲となりますように!
記事のポイント
- 幻想即興曲は中級上から上級レベルの技術が必要
- ピティナ・ピアノステップでは「発展5」に分類される
- 全音ピアノピースでは「E(上級)」に分類される
- リズムの複雑さと速いテンポが難易度を上げている
- 表現力が求められ、フレーズの「歌い方」が重要
- 初心者は5年以上の基礎練習が必要とされる
- 中級者はリズム練習を重点的に行うと良い
- 上級者はペダルや細部の表現でさらに完成度を高められる
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難易度が近い曲として、ラフマニノフの「鐘」が挙げられます。この曲は中級上レベルですが、幻想即興曲とは異なる技術が求められます。特に、幻想即興曲の速い指の動きが苦手な方や、オクターブでの跳躍が得意な方にはおすすめです。
力強く弾き映えのする魅力的な一曲なので、興味のある方はぜひ挑戦してみてくださいね!